PSI CyberSecurity Insight
2025年12月24日
株式会社ピーエスアイ
Webアプリの「仕様の穴」を突くビジネスロジック攻撃、従来の脆弱性診断では発見困難
背景
SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)といった従来型の脆弱性対策が進む一方で、アプリケーションの「正常な機能」を悪用する「ビジネスロジック攻撃」が新たな脅威として浮上しています。この攻撃は、プログラムコード自体には脆弱性がなくても、業務フローや処理手順の設計上の不備を突くため、自動化された脆弱性診断ツールでは検知が困難です。ECサイトでの不正な価格操作、ポイントシステムの不正取得、予約システムの転売目的占有など、実際のビジネス被害に直結する事例が国内外で報告されており、企業の収益や信頼性に深刻な影響を与えています。
実態
ビジネスロジック攻撃の典型例としては、ECサイトでの「カート内商品の価格改ざん」があります。攻撃者は正規の購入フローを進める中で、ブラウザの開発者ツールやプロキシツールを使って送信データを改ざんし、商品価格を1円に書き換えたり、割引クーポンを不正に重複適用したりします。サーバー側で価格の再計算や妥当性チェックが行われていない場合、この改ざんがそのまま受理されてしまいます。また、ポイントプログラムにおいては、本来1回のみ適用されるべきキャンペーンを、リクエストを高速で繰り返し送信することで何度も適用させる「レースコンディション攻撃」や、アカウント作成時のボーナスポイントを大量の捨てアカウントで不正取得する手口も確認されています。予約システムでは、botを使って人気チケットや限定商品を一瞬で大量確保し、転売サイトで高額販売する「スキャルピング」が社会問題化しています。さらに、パスワードリセット機能の設計不備を悪用した他人のアカウント乗っ取り、返金処理の抜け穴を突いた不正返金要求など、攻撃手法は業務フローの数だけ存在すると言えます。
影響と対策
ビジネスロジック攻撃による被害は、直接的な金銭損失だけでなく、正規ユーザーの購買機会喪失、ブランドイメージの低下、法的責任の発生など多岐にわたります。対策としては、まず設計・開発段階で「悪意あるユーザーが存在する前提」でのセキュアな業務フロー設計が不可欠です。具体的には、クライアント側から送信される全てのデータを信頼せず、サーバー側で必ず再計算・再検証を行う実装、処理の各段階での状態管理と整合性チェック、異常な頻度のリクエストを検知するレート制限の実装が重要です。FortiWebやCheck Point CloudGuard AppSecなどのWAF/WAAPソリューションは、通常のシグネチャベース検知に加え、APIスキーマ検証やレート制限、異常な挙動パターンの検知機能を提供し、ビジネスロジック攻撃の一部を防御できます。また、botによる自動化攻撃に対しては、CAPTCHA、デバイスフィンガープリント、行動分析などのbot対策技術の導入が効果的です。さらに、実際の業務フローを理解したセキュリティ専門家による手動ペネトレーションテストを定期的に実施することで、設計上の盲点を発見することが推奨されます。
まとめ
ビジネスロジック攻撃は「正常な機能の悪用」であるため、従来のセキュリティ対策では見落とされがちです。しかし、実際のビジネス被害は甚大であり、企業の収益基盤を直接脅かします。開発段階からのセキュアデザイン、多層的な検証ロジック、継続的な監視が不可欠です。PSI社では、ネットワーク製品によるトラフィック分析とアプリケーション保護、そしてセキュリティ専門家による業務フロー分析を組み合わせ、ビジネスロジック攻撃に強いシステム構築をご支援いたします。
参照記事リンク:
OWASP Business Logic Vulnerabilities, IPA ウェブサイトのセキュリティ, Fortinet FortiWeb - Advanced Protection会社概要
社名:株式会社ピーエスアイ(PSI)
所在地:〒160-0022 東京都新宿区新宿5丁目5-3 建成新宿ビル4階
設立:1994年
TEL:03-3357-9980
FAX:03-5360-4488
URL:https://www.psi.co.jp
事業内容:サイバーセキュリティ製品の販売および導入支援、運用サポート、ITコンサルティング
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広報担当:内藤
電話番号:(03)3357-9980
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